このタイトルだけ見ると、障害に対して否定的な差別的な印象をもちます。
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しかしとっても面白い本だったのでご紹介しますね!
仕事で関わる方は同じ障害を抱えている方たちなものの精神科の先生と仲良くなることないのでめちゃくちゃ面白かったです。自分にとっての違和感を認めたくないという反応こそが正常なのでは?という著者の思考からこの先生は信頼できる。先生も人間なんだなって改めて思った。https://t.co/623zkwr2XM pic.twitter.com/G83stNHBEh
— よしころろ@社会福祉士|障害就労支援 (@nya_i) August 27, 2020
Contents
この本は障害異常性を伝える本ではない
読者にある一つの疑問を投げかけたい。
「あなたは自分のことを精神的に正常だと思いますか?」
ちなみにわたしは、紺質問に即座にイエスとは答えられない。自分にも、、他人にから見ればおかしい考え方や、違和感のある感じ方などがあると思うからである。
まずここから本ははじまる。
あなたは正常ですか?と聞かれたら自信をもってはいとは言いずらい。正常と異常は0か100の2択ではないし、異常度30%なんて判断もできない。
ただ、この本の中には多くの人がおかしいと判断できるエピソードが複数紹介されている。
・強すぎる被害妄想カレーライスの嫌がらせ
・キャリア官僚が犯した凡ミスから精神科入院まで
・「寝なくても平気」異様なハイテンションは病気か
・人を傷つけても心の痛みが一切ない巧みな自己正当化
・威嚇と攻撃、実は見落とされがちな病気
・悪気がないという異常性
・当直医泣かせの常連「死にたい」の電話
また、このエピソードには病識がないことをが共通している。自分でその障害に気が付かない。自分としては普通であることが周りから異常に見えている。
「異常な状態では異常な反応を示すのが正常なのだ。精神医学者の立場からも、人間は正常であるほど、たとえば精神病院に入れられるといった異常な状況に置かれると異常な反応を示すことは、充分に予測できる」
これはナチスの強制収容所から奇跡的な生還を果たしたユダヤ人の精神科医、ヴィクトール・E・フランクルが名著「夜と霧」の中で述べた言葉なんだそう。
この本のなかで印象に残ったところを3つ紹介します。
幻聴幻覚で近所から嫌がらせをされており眠れない患者に対しての医師の言葉
「武田さんが大変お困りのことは分かりました。睡眠は、健康だけでなく日常生活を元気で過ごすためには大切な物です。ただ、不眠症の治療は、ただ睡眠薬をだせばよいというものではありません。不眠は体の病気や他の薬、あるいは細かい脳梗塞でも起こることがあります。健康診断のような気持ちで簡単な検査を受けてみることをおすすめします」
あえて核心となる診断をつけずに、患者に共感する姿勢を示しかつ体の病気や睡眠の問題にすり替える作戦をとった。薬はすぐに処方しないというスタンスをとったことも安心感を高めるテクニックでもある。
私自身、障害のある方の就労のサポートをしており主治医に相談しに行ったり通院同行をすることがあるのですが、ここまで考えてるなってお医者さんがいることに嬉しく思いました。
あきらかに異常と判断される人に異常であることを告げるのは簡単だけどストレートに受け入れる患者なんて少ないに決まっている。今後の通院をしてもらって症状を緩和するためにも信頼関係を作ることができる関わりだと思うし、、うーん素敵!
これはただ私が安心できたって意味で印象に残りました・・


双極性障害では自分異常性に気づけない理由
双極性障害の人が自分の異常性に気づかない、あるいは目をそらすのは、自分が絶好調である、まさにこの時期である。何より患者自身は、全く困っていないどころか、疲れも知らず頭脳も身体もキレキレなのである。この好調さが頭に刷り込まれていて、「あれが自分の普通の状態」と思い込んでしまう。抗うつ状態のときも。「好調のときとは程遠い」と比較する物差しを自分の(軽)躁状態のときに合わせてしまう。自分の変調に気がつかないまま、時が流れてしまう。双極性障害の診断が下されるまでに、約8年かかっているというデータもある
私自身、双極性障害は難しいとすごく思う。双極性障害と診断がついているとまだ支援の方法はあるものの、うつ病と診断されてるけど、普段一緒に訓練するなかで「この診断違う。絶対うつじゃなくて双極性障害だろ!」と思う方に何人か出会ってきた。
双極性の診断がない場合はなかなかサポートが難しくて、そう状態のときは本当に根拠のない自信があって自分を冷静に見れないので、就職活動の方向性が躁の時と鬱の時で全然違うなんてこともあってなかなか時間がかかる。
双極性障害っぽいエピソードをみつけられるのは就労移行のメリットだと思うので、そういうときはうつの状態のときに通院同行をして、困っていることを本人から説明&客観的に支援者からお伝えするようにしている。
ただそれも主治医によって上手く連携できるところとできない医者がいるので、改めて双極性障害の支援は難しいなと思ってしまった。


医者も人間であってどうすることもできない感情もある
死にたいと夜中に電話してくる患者。
「結局同じことしか言わないのね、あなたたちって」
捨て台詞を吐き、玲子は突然電話を切ってしまった。とはいえ、これはいつものパターンである。他の医師が対応したときのやりとりは詳しくは分からないが、わたしが対応したときには、なかなか後味よく会話を終えることができたためしはない。
暗黒な暗闇の中で、PHSは淡い光を放ちながら午前2時半を示していた。いつもながらとはいえ、わたしの心拍はやや激しくなっており、玲子の攻撃性に意識は刺激され、目は異様に冴えてきてしまった。明日、いや今日も寝不足のまま遅くまで仕事をしなければならないかと思うと、当直室の闇以上に暗澹とした気持ちになってくるのを、どうすることもできない。
いつでも支援がうまくいくわけじゃないし、こういうケース障害福祉の仕事してたらあるあるだと思っていて、もやもやすることも多い。
支援者としてこういう感情はあまりよくないなと自分を責めてしまうこともあるけど人間だから私も医師もこんな感情になるもんだなと安心したので印象に残りました。

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まとめ
おすすめ度★★★★☆(5のうち4)
障害者福祉の仕事をしていて、変な先生に出会うことが多いので、理想的な先生の対応はこんな思考や対応をされるんだなということがわかって参考になりました。
ちょっとでも先生がおかしい、全然診察してくれないと感じた際はセカンドオピニオンつけてほしい。
どうしても就労移行の立場からは主治医を変えましょうとは言えないので一緒に先生に訴えかけたりはしていきたいと思いました!
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