障害者雇用として発達障害ASDを持ちながら働く経験談
今回、障害者雇用で働くルーシーさんに記事の執筆をお願いしました。
ルーシーさんはブログも運営されているので興味を持った方はそちらのサイトもどうぞ!
障害者雇用で働くと決めたきっかけや就労移行支援事業所を活用した経緯など他の方の参考になると思います。
私の発達障害と障害者雇用のきっかけ
私は発達障害者の自閉症スペクトラム症(以下、ASD)です。精神障害者保健福祉手帳3級を2017年2月から所持しています。
ASDとは、非言語的コミュニケーションを用いたり理解すること、また、人間関係を発展させ、維持し、理解することが苦手な障害です。
具体的に私の場合、「空気を読む」ことや、表情から他者の気持ちを汲み取ることが幼少期から苦手です。
そして人を覚えるのが遅く、初対面でない人に間違って「初めまして」と言うことは日常茶飯事です。
目を見ながら会話しようとすると、頭をフル稼働させないと相手の話す言葉を理解できないので、目を見ないで会話する方が負担がないです。
また、初対面の人に対する不安が強く、他者と親密な仲を育む方法がわからず、幼稚園から大学までほとんど友人を作れませんでした。
唯一改善した特性は失言癖です。「相手の容姿については良いこと悪いこと一切意見しない」などのマイルールを設けて失言を避けています。
障害者雇用で働こうとした理由は、ASDのこの特性が大学4年時の就職活動に甚だしく悪影響したからです。
履歴書や筆記試験は可も不可もなく通過しますが、その次にある一次面接やグループワークがどうにもこうにも通過しません。
一次面接とグループワーク合わせて50社全て落ちました。面接では「目線が合わないのが気になった」「表情が薄いのが気になった」「質問に対する回答がずれている」などのフィードバックがあり、何回面接の練習をしても劇的な改善はしませんでした。
グループワークでは、人を覚えるのが遅い特性が災いして、初対面でない相手に「初めまして」を2、3回言ってしまうことがありました。
ASDに気づいたのは大学1年の発達心理学の講義がきっかけですが、社会人になる上で壁になるとは思い至らなかったのです。
「発達障害 就職」でインターネット検索で調べて考えた結果、就労移行支援施設という障害者のための特別な職業訓練施設があることを知り、発達障害者も利用できることがわかりました。
これを理由に、障害者手帳や障害者雇用についても考えるようになりました。正式な診断を病院へ受けに行ったのはそれからで、大学4年の8月です。
就労移行支援を使って就職を目指した
就労移行支援施設を選んだ理由は、社会経験や目立ったスキルがなく、ASD独特の印象の悪さを放つ私がハローワークにいきなり飛び込むより、職業訓練を受ける方が就活を成功させやすいだろうと考えたからです。
私が選んだ就労移行は「一般雇用(オープンでもクローズでも)を目指したい人歓迎」とあり、障害者雇用に絶対行くとまではまだ決めてはいなかった私には魅力的でした。
まず、就労移行に通うために障害者手帳を大学4年の2月に申請。しかし手帳が届くことを待っていたら就労移行にすぐには通えません。
手帳申請手続きと並行して、就労移行に通うための書類を医師に書いてもらいました。手帳を所持していなくても「医師の判断でこの人は就労移行を使う必要があります」という証明になる書類です。
おかげで、大学卒業直後にスムーズに就労移行に通うことができました。
就労移行に通って半年経ってから本格的に就活を始めました。具体的には、障害者雇用の就職エージェント、就労移行に直接来た求人です。
就職エージェントでは求人を多くは紹介されませんでした。
発達障害自体に企業から人気がないのはもちろん、私に社会経験がないからです。
エージェントは2社使いましたが、うち片方は「紹介できる求人がありません」とのことでした。
それでも、面接や障害特性の説明書のための講座は無料で参加でき、一般企業が求める障害者像を知ることができました。
企業が就業経験以外に障害者に求めるのは、自分の障害とその対処法をわかっていて他者に特性を説明できることです。
最終的に内定を得たのは就労移行に来ていた求人です。
企業が信頼してその就労移行施設に求人を出すわけですから、社会経験のない私でも一次面接で会ってもらうことができ、実習、二次面接、最終面接とトントンとスムーズに進みました。
就職後は出身施設から定着支援サービスを受けられるはずなのに…
本来、就職後は就労定着支援サービスのサポートを受けられるはずでした。
しかし定着支援の担当者が体を悪くして、代わりのスタッフを施設側が用意できず、私は出身施設からはほとんどアフターサポートを受けられていません。
現在は別の就労移行支援施設から定着支援サービスを受けています。
ただ、こういうことはレアケースでしょう。普通は出身施設からのサポートを就職後に受けられるのではないでしょうか。
自分が選んだ就労施設の良し悪しについて
私が通った就労移行はベンチャー的な気質・ノリがあり、福祉的な雰囲気が薄かったです。
「健常者」が「障害者」を「お世話・指導する」空気はありません。
良くも悪くも対等をモットーとしています。
だから健常者社会人として長く生活してきた方には合っているのではないでしょうか。
また、必ずしも障害者雇用を目指すわけではなく、オープンにしろクローズにしろ一般雇用を望む人が当然のようにいるカルチャーです。
一般雇用のクローズを視野に入れる人にも向いています。
しかしベンチャー的ノリはデメリットでもあります。
スタッフは社長の仲間内で集められているので、福祉的ケアができる人員を十分に揃えていません。
それで私は定着支援サービスを継続して受けられなかったわけです。
また「面倒を見る」姿勢に欠けているので、就労移行で面接の練習は満足にできませんでした。
障害特性説明書も、就労移行ではなく就職エージェントの無料講座を活用して完成させました。
それなりに歴史と就職者が出ていて「福祉施設」としての土台がしっかりしている就労移行を利用すれば、これはありえません。
就労移行をこれから使いたい方は、施設のカラーを知ってから利用するべきなので、利用前にいくつかの施設を見学することをおすすめします。
自分が施設に何を求めているのかと、施設が何を我々に提供してくれるのかを見極めてから通所するべきです。
私が利用した就労施設は、自己責任と自走を重んじる施設の姿勢が合わずに退所した者、メンタルや就職のためのサポートが足りずに不満を抱えて他の施設へ移った者がいます。
合っていない施設を選んだ結果ますます病んでしまうこともあります。施設選びで焦ってはいけません。